選手はネット際のフォアハンドボレーに踏み込み、カメラは足の幅がラケット3本分も開いたワイドスタンスを正面から捉えた。顔には、外科的な精度とフライパンでハエを叩く野生のエネルギーが同居していた。制御されたカオスの、もっとも上等な見本だ。
女子テニスのネットプレーは、選手とコートサイドカメラの距離をもっとも縮める瞬間だ。ネット前のフォアハンドボレーでは、200mmレンズを構えたカメラマンまで2メートル以内になる。その距離ではすべての質感が鋭くなる。グリップテープの目、前腕から飛ぶ汗のしぶき、そして自信とパニックがまじりあう目元の微細な表情の境目。ボレーはウィナー。表情のほうは、1コマに圧縮された喜劇のリールだった。