セット間のベンチにテニス選手が座り込んだ。頭にはタオル、片手には水のボトル、姿勢は「続行するなら体が正式に抗議する」と伝えたい男のそれだ。チェンジオーバー用の椅子は90秒休むためのものだが、彼にとっては疲労の玉座になっていた。
チェンジオーバーは90秒。水分補給、汗を拭う、コーチングを受ける時間だ。この選手は90秒すべてを引退について考えるのに使っているように見えた。落ちた肩、空ろな視線、水のボトルを握る死に物狂いの指先。脚の予算より1セット長引いた試合を物語る要素が揃っている。カメラは、闘志と肉体の降伏が同じベンチに同居した一瞬を切り取った。